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相続の何がどう変わった?vol.1|暮らしのお役立ち情報|Lifan(ライファン)

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2020.04.11

季刊誌Lifan

相続の何がどう変わった?vol.1

相続の何がどう変わった?

相続に関する民法等の規定(以下「相続法」という。)が大きく見直され、順次施行されています。今回は、その中から、すでに施行されたもので、多くの方にとって関係し得る身近な改正点5つについて触れていきます。紙面の都合上、ポイントとなる点に絞って言及しますので、ご興味のあるトピックについての詳細や条件などは専門家にご相談頂く等のご対応をお願い致します。

1.遺留分制度の見直し(2019年7月1日施行)

遺留分とは、遺贈や生前贈与などで被相続人の財産が特定のものに承継された場合でも、法定相続人(兄弟姉妹を除く)に最低限度の取り分を認め、請求によってその取り戻しを認めた制度です。

Point1:請求権が行使された場合の権利は金銭請求権

改正前

請求権を行使すると、対象となるすべての相続財産がいったん共有状態となっていました。

改正後

請求権を行使すると、金銭債権となり、金銭で支払うことが義務化されました。請求された側は、現物支給で弁済することは認められません。これにより、複雑な共有関係が発生せず、請求後の処理も早くなることが期待できます。

 

 

Point2:遺留分算定に組み込むべき特別受益となる相続人への生前贈与の範囲が10年に短縮

改正前

相続人以外への生前贈与は、(害意ある場合を除く)相続開始前1年以内の贈与を持ち戻して算定するのに対し、相続人への特別受益となる生前贈与は生きている間に行ったすべての贈与等を持ち戻して遺留分の算定がされていました。

改正後

相続人以外への生前贈与については変更はありませんが、相続人への特別受益となる生前贈与は相続開始前10年以内の贈与を持ち戻して遺留分の算定をすることになりました。(害意ある場合は、期間の制限はありません。)

2.自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日施行)

遺言書を遺す場合のメジャーな方法として、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、その手軽さというメリットがある反面、ルールが細かく定められていて、やり方を間違えるとその有効性自体にも影響が出ます。今回の改正でこれまでの厳格なルールが少し緩和されました。

Point:財産目録はパソコンで作成したりコピーを付けてもOK

改正前

自筆証書遺言は全文を自書により作成することが求められていました。

改正後

自筆証書遺言の中の財産目録については、パソコンによる記載や、登記簿謄本・通帳などはコピーを付けることで自書に代えることが出来るようになりました。ただし、自書によらないすべてのページに署名・押印する必要があります。なお、2020年7月10日からは法務局における自筆証書遺言の保管制度が開始されます。この手続きを踏んだ自筆証書遺言は、裁判所の検認が不要になります。

3.特別の寄与の制度の創設(2019年7月1日施行)

これまでの寄与分制度とは、被相続人のために労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護等で、被相続人に貢献した相続人に、その貢献に相当する額の財産を遺産から取得させることにより相続人間の公平を図ろうとするものでした。

Point:相続権のない親族も、貢献した分の報い(特別寄与料)が認められることに

改正前

上記のとおり、これまでの寄与分は相続人に限定されていました。

改正後

相続人以外の親族にも特別寄与料という金銭請求権が認められることとなりました。療養看護の例でいえば、被相続人の子の配偶者などをイメージしやすいと思います。もちろん、この例でいえば、家族にはもともと扶養義務があるため、この特別寄与が認められるためには、その扶養義務を超える「無償の」労務提供があったことが求められ、この請求は被相続人の死亡を知ってから6か月または相続の開始から1年経過するまでに行う必要があるなど、諸条件はありますが、相続人以外の親族に対象を広げたことでその貢献が報われることとなったという意味で大きな意義があります。

4.婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の
贈与等に関する優遇措置(2019年7月1日施行)

長年連れ添った夫婦間の居住用不動産の贈与には、配偶者控除の制度があり、一定の枠内で贈与税が非課税となるため、多くの夫婦がこの制度を使っています。しかし、相続の局面では、贈与等を受けた配偶者の相続分が減ってしまうことがありました。

Point:持ち戻し免除の意思表示が推定され、配偶者の実質の相続分が増える

改正前

相続人が生前贈与や遺贈等を受けた場合、原則として特別受益に当たるものとして取り扱われます。上記、夫婦間の居住用不動産の贈与や遺贈等の場合にも、被相続人の特別の意思が遺されていなければ、遺産の価額算定には、その贈与や遺贈等を受けた分が持ち戻されることで配偶者の相続分が減少することになっていました。

改正後

配偶者への居住用不動産の贈与や遺贈等の意図は、妻(または夫)の相続時の取り分を減らすことではないことが一般的で、今回の改正もそのような被相続人の意思の尊重と、残された配偶者の生活保障を厚くする目的で、このようなケースの場合には持ち戻し免除の意思が推定されると規定し、計算の対象外にすることで配偶者の相続分が実質的に増えることになりました。

 

 

5.預貯金の払戻し制度の創設

相続財産としての預貯金は、遺産分割前に各相続人が個別に払戻しを受けるには相続人全員の同意が必要でした。

Point:共同相続された預貯金が、遺産分割前に払戻し可能に

改正前

上記のとおり、実務上、相続債務の弁済や相続人の生活費、葬儀費用などの緊急を要する場合に不都合が生じていました。

改正後

これまでの不都合に対応するため、2通りの預貯金の仮払い制度を設けました。
①家庭裁判所を経ないで、単独での預貯金の払い戻しを認める。
②家庭裁判所の判断を経て預貯金の仮払いを認める。
①は、限度額が定められてはいますが、緊急を要する場合にはとても有効で、小口需要を想定しています。②は、裁判所がその必要性を認める限り払い戻しが可能とされ、限度額は定められていませんが、家庭裁判所の審査を受ける必要があり、即効性に欠けます。大口需要を想定しています。

 

 

執筆者プロフィール

[司法書士] 由宇 宏崇
兵庫県司法書士会(登録第1756号)
昭和53年生まれ
平成22年 司法書士の資格取得
神戸市内司法書士法人勤務後、平成25年 由宇宏崇司法書士事務所開設